
体験がもたらす価値とは - AI時代における「人間らしさ」の行方
📑 目次
AIによる業務の効率化が進み、一方で「では、人間にできることは何だろう」ということを考えることが増えました。便利さが溢れる社会だからこそ、「心を動かす瞬間」とはなんだろうかと。
私が行き着いた答えの一つが「体験」です。モノやサービスの性能が高まって当たり前になったからこそ、人の心に深く残るのは"どんな時間を過ごしたか"なのだと感じるようになりました。
コース料理に見る、"特別な時間"の設計
先日、料理研究家のリュウジさんの動画で「クロッサムモリタ」というレストランの話を知りました。
なんと予約が7年待ちという驚きの人気店。料理はもちろんのこと、撮影はほぼNG、私語も厳しく制限されると聞いて、「そんなにハードルが高いお店なの?」と思わず動画を観てしまいました。
しかし実際の狙いは、「この一瞬を存分に堪能してほしい」というお店側の強い想いにあるのではないかと。スマートフォンや会話に気を取られることなく、料理の味や香り、空間の空気感までを100%楽しんでもらおうとする姿勢。その徹底ぶりが、ただ食事をするだけでは得られない“特別な時間”を生み出すのだと感じます。
これは効率化でどうこうできる類のものではなく、「人間だからこそ感じる五感の豊かさ」を最大限に引き出すための演出なのかな、と私は感じました。実際に動画を観ていると、お店を仕切る森田さんの雰囲気や信念に引き込まれて、「一度も会ったことがないのに、なんだかすごくいい人そう…」と勝手に親近感が湧いてしまいました。
香りが“人生の栞”になる - zzzgooの世界
また、最近SNSで注目を集めている「zzzgoo」という香水ブランドがあります。ここでは、一つひとつの香水に“短編小説”のような物語が付されており、世界観づくりなども作り込まれているのが気になっていました。
たとえば「人生の栞になる香り」というコンセプト。誰しも、ある匂いをかいだ瞬間に昔の記憶が鮮明によみがえる経験をしたことがあるのではないでしょうか。香りは脳の感情や記憶を司る部分と直結しており、人間にとって非常に印象深い感覚です。
zzzgooが面白いのは、香りごとに短編小説のような「物語」が設定されているところです。ただ香りを売るのではなく、その背景にストーリーや世界観をしっかり作り込んでいる。花言葉ならぬ「香り言葉」を設定したり、日本産の原料を使用したりと、どこかアート作品のような丁寧さが感じられます。
そして実際に使ってみると、届いたときの梱包からもうワクワクするんです。開封する瞬間には、「物語が詰まっている箱を開けるようなドキドキ感」があって、気づけば「この香水を使っている自分、ちょっといいかも」と思ってしまう。
香りはもちろん素晴らしいのですが、それだけでなく、"私自身がその世界観の一部になる"という特別感を味わえるのがzzzgooの魅力だと感じています。
体験が時代の付加価値になる理由
世の中が便利になりすぎると、どうしても"情緒"や"特別感"が薄れがちです。だからこそ、コース料理のように一瞬を徹底的に演出する場や、香水のようにストーリーを丸ごと纏えるプロダクトが、多くの人の心に深く刺さるのではないでしょうか。
- 記憶に残るインパクト
人間の五感がフルに刺激される体験は、いつまでも色あせずに残ります。あのときの味、香り、空間 - そこに至るまでの過程が「人生における大切な思い出」として刻まれます。 - ストーリーが顧客を巻き込む
AIがどんなに性能を上げても、物語を紡ぐ"人間の想像力"は代替しにくいと感じます。自分自身が物語の主人公になれるような仕掛けは、ブランドとの深い結びつきを生み出します。 - 五感へのアプローチ
香りは特に記憶や感情を呼び起こしやすい感覚と言われますが、味や触感、視覚にいたるまで、五感を意識した設計はAIでは再現しきれない"人間らしさ"を強調してくれます。
AI時代こそ、人間の熱量を大切にしたい
いまやAIは私たちの日常に当たり前のように存在し、効率化や分析において大いに助けられています。一方で、効率性の先にある「感情」や「豊かさ」は、人間が生み出すものだと感じます。
いくら業務をスムーズにしてくれても、人を感動させるアイデアや、思いがけないひらめき、誰かの価値観を大きく変えるような体験は、人間がもつ"熱量"や"こだわり"が根底にあってこそ生まれるものだと考えています。
たとえばレストランで体験する「最高のおもてなし」や香水の箱を開けるときのドキドキ感は、データやアルゴリズムだけでは再現しきれない、人間の想いが詰まったプロセスだからこそ魅力的なのだと思います。
AIを上手に活用しながらも、私たちがどれだけ人間らしさを発揮できるか。それがこれからの社会をより豊かにする鍵だと感じているので、これからも「体験」がもたらす可能性を追求していきたいです。
結論:記憶に残る体験こそ、これからの付加価値
AIが飛躍的に進化する今、「人間にしかできないことは何か」という問いに対して、私は「体験をクリエイトすること」がヒントだと感じています。
予約が7年待ちのレストランで味わう一瞬の緊張感も、香水の箱を開けるときの胸の高鳴りも、そこにはAIでは再現しにくい"人間の想い"が詰まっているのだと思います。
きっとこれからのマーケティングは、"商品の周り"にある物語や空気感をどうデザインするかが大切になってくると考えています。スペックや価格だけでは測れない「豊かな体験」は、人々の記憶にしっかり刻まれ、長く愛されるはずです。
あなたは、大切なお客様にどんな体験を届けたいですか?
その答えを突き詰めていけば、AI時代でも変わらずに輝き続ける"人間らしさ"が見つかるのではないかと感じ仕事に向き合っていこうと思いました。